「註釈 上紀」 完成 | ||
![]() 完成した「註釈 上紀」上・下2巻と田中勝也氏 |
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「註釈 上紀」の完成を祝う 2005年6月15日 ホームページ「解読 上紀」管理者 吉森 健 |
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私は大分県で生まれ大分県で生活してきた大分県人である。 その私が、「ウエツフミ」なる不思議な書物が大分県に伝わっているということを知ったのは今から二十数年前、田中勝也氏著「偽書考」によってであった。 古事記、日本書紀とは異なる古代日本の隠された歴史が、ハングル文字に似た奇怪な文字で書かれているという。 しかも私の育った臼杵の浜がその舞台の一つになっているという。 「偽書」だとしても一体誰が何のために書いたのか、何らかの史実が含まれていることはないのだろうか。 強いインパクトをうけた記憶がある。 其の後、郷土の歴史に関心をもち始めて色々な著書や論文を読んできたが「ウエツフミ」に対する好奇心は続いた。 好奇心を満足させてくれる材料に出会うことがなかったからだ。 「偽書考」のあと十年後、田中氏の「上記研究」を読むことができた。 私の「ウエツフミ」に対する関心はいよいよ高まった。 なんとか「ウエツフミ」そのものを読むことができないかという気持ちにさせられたのだ。 その直後、調査のため来県した田中氏に会う機会を得た。 そして今から七年前、「ウエツフミ」の解読を続けておられる田中氏に、 解読の結果をインターネットで公開してもらえないだろうかという話をもちだした。 「ウリウノオハマ」をはじめ大分県にゆかりのある地名が「ウエツフミ」には沢山出てくるという。 多くの大分県人の目で見れば、何か「上記研究」を超える事実がわかってくることもあるのではないかと考えたのだ。 また「ウエツフミ」はいろいろな日本の文物の起源について百科事典的に書かれていることも「上記研究」で知っていた。 早く出版されるのが望ましいけれど、解読結果をいち早く知りたいというのが、ホームページ作成の協力を申し出た私の隠された意図であった。 田中氏は快諾してくれた。こうして出来上がったのがこのホームページ「解読 上紀」である。 二年間にわたるホームページ作成作業の過程で私の永年続いた「ウエツフミ」に対する好奇心は大いに満足させられた。 実にありがたい経験であった。 そして今日遂に「註釈 上紀」が刊行された。 田中氏の「ウエツフミ」研究の総決算である。 多くの歴史研究者が「偽書」の一言で黙殺してきた「ウエツフミ」に真正面からとりくみ、この成果を生み出した田中氏のご努力にはなんと申上げたらよいかわからない。 数年前「歴史読本」で『偽史源流行』というシリーズ記事が掲載された。 明治以降数多く現れ世を騒がせた「偽史・偽書」類の源流に「ウエツフミ」があるという。 末流の偽書類の多くが、ある程度その創作過程について解明されているにも関わらず、源流に位置する「ウエツフミ」はまだ謎である。 田中氏の研究で平田篤胤との関連などは実証された。過去の歴史研究者はこのレベルで「ウエツフミ」研究を投げ捨ててきたのだ。田中氏はその奥にあるものを求めて研究を続けているのだ。田中氏のご健勝をお祈りするばかりであるが、「註釈 上紀」の刊行を機に、この書を土台にした新しい「ウエツフミ」研究が生まれてくるに違いないと思っている次第である。 やはり活字はありがたい。 いま一度この「註釈 上紀」により、ゆっくり「ウエツフミ」の世界をたずねようと思っているところである。 |
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※「注釈 上紀」は全国の書店でご注文できます。 |
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註釈 上紀 | ||
全2巻セット定価 本体28,000円+税 平成17年6月15日 初版発行 訳・註 田中 勝也 発行者 武田 崇元 |
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発行元 八幡書店 〒141-0021 東京都品川区上大崎2丁目13番35号 ニューフジビル2F 電話 03(3442)8129 |
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◆◆◆◆◆訳・註者 略歴◆◆◆◆◆ 田中 勝也(たなか かつや) 1937年 山梨県甲府市に生まれる。 1961年 東京大学文学部西洋史学科卒業後、東京放送報道部に勤務(1998年退社)の傍ら、古代史の研究に携わる。 論文: 「上記は古代史を書き換えるか」(『創』1975・4〜7) 「百越の始祖伝説と日本神話」(『東アジアの古代文化』1975別冊) 著書: 『倭と山窩』(1977、のち『サンカ研究』) 『幻の日本原住民史』(1981) 『日本原住民と神武東征』(1982) 『環東シナ海の神話学』(1984) 『異端日本古代史書の謎』(1986) 『古代史原論』(1987) 『上記研究』(1988)他多数 |